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  ■ 2006年夏高校野球部物語Part.2(3)
記事: スポーツニッポンから
2006.7.24

第88回全国高校野球選手権(東東京大会)

ハンデキャップを乗り越えて

(茨城大会)
     藤代紫水の「サイレントエース」鈴木5回8K!!1発

茨城1回戦(土浦市営球場)=7月13日=
つくば国際大土浦       (5回コールド)  
藤 代 紫 水     X 11


<つくば国際大土浦・藤代紫水>
先天性難聴の障害を乗り越え、
力投する藤代紫水・鈴木

難聴乗り越え
仲間の喜びも、スタンドの歓声も鈴木には届いていた。打って、投げて、走った。
先天性難聴の障害を乗り越えてグランドに立った藤代紫水のエース兼4番が、最高のプレーを見せた。
鈴木は補聴器を着けた左耳がわずかに聞こえるだけで、打球音も中藻の声も届かない。
だが、初回の守備で送りバントを処理する際、捕手が二塁を指したのを見て迷わず送球、見事に進塁を阻止した。この回こそ先制点を許したが、ひときわ大きな歓声を浴びたのが2回の打席だ。先頭打者で、0−1からの2球目を中越えの先制ソロ。自らのバットで失点を取り返した。ベンチ前でナインにもみくちゃにされて祝福を受けた主砲は、はっきりこう言った。
「(本塁打は)直球を狙っていた。次の試合でも打ちたいです」
打つだけではない。投げては5回を5安打1失点で8奪三振。魂の107球がチームに11−1の5回コールド勝ちを呼び込んだ。
「制球に反省点はあるが、試合に勝てて嬉しい」。3回の連続四球を反省したが、津脇監督は満足そうに合格点を与えた。「鈴木のホームランが打線を大いに勢いづけましたね」
野球を思い切りしたい。ハンデを抱えながら強豪藤代紫水を選択。努力でエースと主砲の座を勝ち取った。そして迎えたラストサマー。鈴木のバットと左腕が茨城の夏をさらに熱くする。

難聴のエース鈴木無念、7失点KO

2回戦(7月16日)
伊 奈 10−3 藤代紫水

先天性難聴の障害を乗り越えグランドに立ったエース兼4番の鈴木の夏が終わった。初戦は1失点完投に同点ソロとフル回転も、この日は3回7失点KO。3回に中前2点打など2安打して意地を見せたが及ばなかった。
「本当に悔しい。大学でも野球を続けてプロに生きたい」。
試合後は観戦した同じ障害を持つ小学2年生・亀田君と握手を交わした高校33発のスラッガーは口元を引き締めた。


■鈴木 達也(すずき・たつや)

1988年(昭和63)4月8日、茨城県生まれの18歳。小4から野球を始める。藤代南中では投手、一塁手、外野手を兼任。藤代紫水では1年秋から一塁のレギュラーをつかみ昨夏は4番、家族は両親と妹。1メートル80、80キロ。左投げ左打ち。

=スポーツニッポン=


(神奈川大会)
     “神奈川のアボット”田中寿明が勝利を呼んだ。

2回戦(7月16日)
神 田     0     
鶴 嶺      


<鶴嶺・神田>3回から登板した神田の
隻腕左腕・田中寿明

6回6安打4失点、神田・夏10年ぶり○
最高の瞬間だった、野球を始めて5年。チーム10年ぶりの夏の1勝ら”神奈川のアボット”田中寿明が声を弾ませた。
「自分の投球をすれば勝てると思っていた。プレッシャーはあったけど勝ててうれしい」。平塚・横内中で双子の兄・寿弥(としひろ)と野球を始めた。先天的に右腕に障害を持つ寿明は、グラブの使い方や打ち方を自分で研究。この試合は1点ビハインドの3回から登板。捕手の兄からの返球は、投球後すぐにグラブを持ち替えて左手で捕球する。4回の投ゴロは、捕球後すぐに右手に持ち替えて、難なく左手で送球。米大リーグで活躍したジム・アボットをほうふつさせる軽快さだ。6回6安打4失点ながら粘り強い投球が9回の逆転劇を呼び込んだ。
昨年、テレビ局を通じてアボット氏に自らの投球フォームを収めたビデオを送った。返ってきた「野球を楽しみなさい」というメッセージとサインは宝物だ。困難を乗り越えて、野球を楽しむ最高の夏はまだ続く。

=スポーツニッポン=



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