01.ユニホーム姿で急きょ指揮役
都葛飾商の応援席に、野球部1年の中島晋太郎選手が、ユニフォーム姿で吹奏楽団の指揮を執った。
初の8強をかけて戦うチームを応援しようと、急きょ楽団の結成が決まった。
が、夏休みで吹奏楽部員が全員は来られない。
「助っ人」を含む6人の奏者を、中学時代に合唱コンクールで指揮者をしたことのある中島選手が指揮した。
攻撃に移ると、「タッチ」や「夏祭り」などの曲で盛り上げた。
「指揮棒は懐かしい。楽しくて仕方ないです」と笑顔だった。
=神宮=
(読売新聞)
02.迷惑かけた主将のために
9回に同点三塁打を放った沼田剛志選手 |
「一緒に勝ちたい」
8強をかけた高輪戦を前に、中学時代からの先輩、奥山海夢(かいむ)主将(3年)に決意を伝えた。
そして、9回。一死三塁の場面で、左翼フェンス直撃の、もう少しで本塁打という三塁打を放った。走者一人がかえり、同点に追いついた。
この打席に向かう時、奥山主将らベンチの仲間は「思い切っていけ」と声をかけてくれた。
部員22人のうち、3年生は3人だけ。2年生部員主体のチームの雰囲気を、「ひょうひょうとした」(父の沼田肇さん)性格でなごませてきた。合宿の夕食では、普段2杯くらいしか食べないご飯を、丼で5杯も平らげて見せた。理由は、「私立の野球強豪校の選手みたいで格好いいかなと思って」。
全員でやろうと決めた朝練習なのに、寝坊して現れないことが続き、ごうを煮やした奥山主将が、携帯電話でモーニングコールしたこともあった。
同点打を放ち、三塁ベース上でガッツポーズを見せた。「みんなが自分に任せてくれた打席。役割をはたせた」という思いから、右腕が上がっていた。
だが、レフトの守備では、ボールの処理にもたつく場面もあった。試合は結局、延長10回サヨナラ負け。「中学から5年間、最後の最後まで迷惑かけて、ごめんなさい」。奥山主将にそう謝った。
引退する先輩達の言葉を、目を赤くしながら聞いた。最後に、奥山主将が「ぶっちゃけ、もう1回勝ちたかった」とあいさつすると、また涙があふれてきた。(門間順平)
(読売新聞7.27)
03.「150戦練磨」危機に威力(高輪高校)
中学からバッテリーを組む高輪の田沼雄貴捕手(左)と今辰巳投手=神宮 |
3−2と1点リードの9回表。先頭打者に左翼への二塁打を浴びると、高輪の田沼雄貴捕手(3年)は、この日初めてマウンドに行った。 「大丈夫か」と声をかけると、今辰巳投手(3年)は「抑えるから心配するな」。これまでに何度も交わしてきたやり取りだった。 中学の軟式野球でもバッテリーを組んでいた。2人で臨んだ試合は150を越す。こんなピンチは何度も経験してきた。が、8強入りを目前にした緊張感は、やはり少し違っていた。 内野ゴロで走者が三塁に進んだ後、球威の無い直球が真ん中に入った。左越えの三塁打。土壇場で同点に追いつかれてしまった。 今度は勝ち越されるピンチ。もう一度、マウンドに行くと、声をかける前に、にらみつけるように言われた。「次は打たさない」 恐ろしいほどの表情に、きっと守り切ってくれるはずだと確信がもてた。「相手は振れているからスクイズはないよ。打者に集中な」。それだけ言うと守備に戻った。 外野フライでも点が入る場面だが、強気に決め球の直球で攻め続けた。6番打者を空振りの三振、次打者も直球で押し切り、連続三振を奪った。「バットに当てさせないよう気迫を込めて投げた」と、今投手は振り返る。 試合は10回裏、4番・片桐靖之選手(2年)の中越え二塁打で、2試合連続のサヨナラ勝ちでベスト8を決めた。 また一つ、修羅場を乗り越えたバッテリー。チーム初の4強をかけ、次は3試合連続コールド勝ちで勢いに乗る第2シードの関東一と戦う(小金丸毅志)
(朝日新聞7.27)
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