最初にわが母校、都立葛飾商業高等学校の野球部の話である。
平成17年4月1日異動で、野球部を指導できる教諭がいなくなってしまった。これは、母校始まって以来のことである。同時に学校長、副校長もか変わったため、17年度は学校運営について過去のことを知るものがいない状態でスタートすることになった。

7/23芝浦工大戦・惜敗。インタビューを受ける選手 |
 インタビューを受ける選手たち |
異動された前監督山田先生は、知人で修徳高校OBの 柏原周作氏(28)を母校に紹介して下さり、同氏が監督に就任された。だが、ここでも問題が起こる。都立高校は外部の指導員を認めていない。つまり報酬の予算がつかないのである。
柏原氏は平日は会社勤めをされ土日の2日間だけ学校に来て指導される。そして1週間分の練習メニューを指示し、週末に練習をチェツクするという指導方法であった。また「全員野球」をスローガンに選手同士、監督と選手のコミニュケーションをはかり人間関係の確立に努められた。
そして、昨年夏の東東京予選大会で、我が母校はベスト16という成績を挙げたのである。
公立高校だから資金難で厳しい。練習試合や大会には試合用のニューボールが必要となるが、それにも苦慮しているというのが実態。遠征には父兄が車を動員している。
東東京大会予選。強豪の私立校高は試合前の練習でもニューボールを使っているが、我が 葛商は使い古しの、それも選手たちが修理したボールを大事に使っている。それを見た対戦相手高から「貧乏チーム」と笑われたそうである。
「でも、見ている人はみているんですね。物を大切にする心という美談で書いてくれたんです」と山下敬偉子校長。
監督の報酬や維持費は野球部父母会、PTA、そして同窓会の援助によって賄われた。監督の報酬も週4時間分を何とかやり繰りして支払ったそうである。監督からは報酬は要らないということでした。
山下校長は、監督はまだお子様も小さく、家族サービスが必要なのに家庭を犠牲にしてまで指導して下さる姿に頭が下がる思いをされたといいます。また、今回のベスト16進出も、前山田監督が作りあげたチームを引き継いでのことで、自分の力ではないとあくまで謙虚な姿勢に心打たれます。
7月23 日の芝浦工大戦、初めて奥様がお子さんを抱いてご両親と観戦されたそうです。
「奥様やご両親のご了解を、ようやく得られたとホットしました。子供たちと監督との素晴らしい人間関係を見てもらえてよかった」と山下校長は喜んでおられました。
今、都立高校は統廃合の波にさらされ、どの学校も生き残りをかけて必死の戦いが続いている。学校教育のなかで、クラブ活動は野球部だけではない。野球部だけに突出して力を入れることに批判がないこともない。しかし、メデイアが大きく取り上げてくれるものは野球をおいて他にない。野球部の活躍が葛飾商業をPRする大きな力となっていることは間違いない。
また、野球部の活躍が他のクラブ活動や勉学に波及効果を及ぼしている。
また、外部から指導者を招いたことで,新しい風が流れている。私は、柏原監督の姿に修徳高校野球部のそして修徳高校の人間教育の素晴らしさを見つけました。
柏原 監督は、あくまで担当教諭が派遣されるまでの「繋ぎ」と学校側は考えていましたが、柏原監督は「報酬はいらないから、繋ぎではなく、長く監督をやりたい」との意向を強くもっておられ。今年も監督を勤めます。
野球部の生徒たちが地域の方々に受け入れられているというニュースにも接しています。学校の近くに南新宿児童館があります。同窓会がパソコンを寄贈し、葛商生がパソコンを教えに行くというポランティアが、今、行われています。児童館を中心に地域のお祭りが毎年行われるのですが、お年寄りが多くなって、後片付けが大変なのだそうです。応援の要請を受けた野球部が、後片付けに駆けつけ、地域の人たちからしてみれば大きな荷物も「あっという間に」片付けてしまったそうです。毎年苦労していた地元の人たちが感激して「感謝状をあげたい」という声が多かったといいます。仲村館長によれば、地元や子供たちに確実に葛飾商業の認知度が上がり、児童館の子供たちのあこがれになっているそうです。平成18年2月の入学試験は、商業科の倍率が4倍を越えたそうです。
柏原監督のもと、我が母校の活躍やいかに、といったところです。
ところで、第76回選抜高等学校野球選手権で沖縄県代表として南の果ての石垣島から八重山商工が出場しました。伊志嶺吉盛監督(52)は午前中のゴミ収集で生計を立てているという。月収なんと5万円。高校野球の監督の年収が1千万円超えるという話もあるなか、我が母校葛飾商業の監督と同じく報酬ではなく純粋にボランティアの心で高校野球に取り組んでいる。(実力は八重山商工の方がはるかに上ですけれど)
葛飾商業と同じく、こちらの野球部も資金に苦労されている。練習試合も高校が3校しかない石垣島内では相手に限りがあり、同じ相手とでは技術の向上がない。どうしても島外に練習相手を求めざるを得ない。金に糸目をつけずにガンガン勝ち抜くのも高校野球なら、日の当たらぬ日々を、時間をかけてじっくりと作りあげたチームも高校野球である。八重山商工の現在のチームは伊志嶺吉盛監督が04年、小学3年から教え育て上げたメンバーである。このメンバーは伊志嶺監督のもと、少年野球全国大会で優勝、中学硬式野球世界大会第3位の実績を残してきた。
その、八重山商工は噂どおりの力を見せた。 |