東京都立葛飾商業高等学校創立60周年おめでとうございます。
　私は、昭和37年4月、第１期生として本校に入学いたしました。本校の初代学校長は、山田市郎先生ですが、本校の創立者的存在の方です。
　山田先生は、昭和35年、都立金町高校（定時制・葛飾区立金町中の校舎に間借りしていました）に校長として着任され、崩壊寸前の校舎を目にし、教育環境を整える必要性を強く思い、新校舎建設を決意されました。そして、さまざまな困難を乗り越え、昭和37年、当地に本校を開校し、学校長・教職員一丸となって本校の礎を築かれたのです。
　本校の伝統ともいうべき、「高い検定合格率」「高い就職率」「厳格な生活指導」「教育熱心な教師団」は、創立当初からのものです。
　学校は創立されましたが、世間には全く無名の学校です。学力で他校に遜色なくとも伝統がないため、生徒の資質を高め社会に認められる人材育成に力をそそがれたと思います。 　とくに就職に関しては「第１期生の就職が葛商の未来を決定する」と就職先開拓に奮闘されたのが土屋卓治教頭先生（後に第一商業校長、全商協会理事長）です。同窓生人脈をフル活用し、大手町・丸の内周辺を、大学の先輩、友人を訪ね、徹底的に回られ就職先を開拓されました。その努力が実り、著名企業が続々と門戸を開けてくれました。余談ですが、私が就職して２年目のある日、土屋先生が私の職場に見えました。「なんだ、君をここにいたのか」と先生が驚かれたことが思い出されます。経理部長を訪ねてこられたようでした。就職先の開拓は、第１回生を送り出した後も、進められていたのです。
　学力の面でも山田先生は「君たちは新設校に入学し不安があるかもしれないが心配はいらない。私は優秀な先生方に本校に来ていただいた。安心して勉学に励んでもらいたい」と云われました。そして、毎朝５分ほど「校長訓話」を全校放送し、生徒を啓蒙されました。
　山田先生は退任後の昭和45年、学園紛争が高校にも及び、教育環境が乱れる中、本校の卒業式に招かれ「本校ではその様なことはない。立派な教育が行われている。母校に対する愛着の情から泣いて答辞も読めないという状況に接し、もらい泣きしました。これは本当に先生と生徒の間に心のつながりがあるからだと思います。葛商に対する世間の評判が良いのは、卒業生の皆さん、教師、そしてご家庭の教育のたまものです」と述べられておられます。
　今日、本校の卒業式を山田先生が目にされたならば、同じ感慨にふけられると思います。
　60年の歳月を、厳しい幾多の荒波を乗り越え、本校には創立当初の教育理念が脈々と受け継がれていると私は思います。
　東京都立葛飾商業高等学校の益々のご発展をお祈り申し上げます。

昭和30年代の写真

■旧校舎	■新・旧校舎航空写真
■校舎増築／(昭和38年)	■校舎増築／(昭和38年)
■校舎増築／(昭和38年)	■グラウンド整備／(昭和38年)