葛飾商業高校野球部に入部希望の中学生のお子様のお母様から「葛友みんなの広場」にご質問が寄せられましたので私見ではありますが回答をさせていただきます。
野球部の柏原監督の任期はいつまでですか?
最近、公式戦で勝ってないみたいですが。
練習が厳しすぎてやめてしまう子もいるようですが? |
1.柏原監督の任期について
柏原監督は東京都の職員でもなく教員でもありません。従って、葛商の教職員のような定期異動で学校を去るということはあリません。
逆に、柏原監督の葛商における身分保障も生活(報酬)の保障もありません。柏原監督が葛商を去る時は以下の理由が考えられます。
1)ご本人が辞意表明されたとき。
2)学校長がその必要がないと判断されたとき。
3)教職員がその必要がないと判断し、職員会議等での決議がなされたとき。
4)野球部父母会、PTAがその必要がないと判断し、学校に申し出があったとき。
5)監督ご自身、または監督の責任下での不祥事などが発生したとき。
以上の5点が考えられます。私はある意味で外部の立場ですから、学校内の見方と違う部分があるかもしれませんが、私見を述べさせていただければ、
現在のところ、上記の5点について、なんらかの問題が起きているという情報は聞いていません。
なお、柏原監督が葛飾商業野球部に就任された経緯は下記(・高校野球物語)をご参照ください。
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・高校野球物語
2.柏原監督の教育方針。(近年「公式戦の戦績がふるわない」というご質問に関連して)
これも私見になりますが、以下の通り述べさせていただきます。
野球部の活動はメデイアが大きく取り上げ突出した扱いを受けますが、野球部の活動は他のクラブ活動と同じく学校教育の一環として行われているもので、その意味で特別な存在ではありません。
とはいえ、どこの高校も「甲子園」を目指し練習していることも事実でしょう。
しかし、葛商野球部の選手(生徒)にとって、長い人生において高校野球に拘わるのは3年間だけです。
プロ野球の世界で野村克也氏が監督として、選手を活かすことで弱小チームを強豪チームに育て、その手腕が評価されています。
橋上秀樹氏の「野村の「監督ミーティング」」(日文新書)に以下の記述があります。
ただ野球がうまいだけでは、人生はうまくいかない。それ以外の人間的な部分が成長し、人から評価されるような人間にならなければ、本当の意味での充実や生きがいにならないのではないか、と選手たちに問いかけているのだ。
人生が80年あったとして、野球が出来るのは、ほんの10年、20年である。それ以外の人生のほうが圧倒的に長いのだ。
だから、野球以外の分野の知識を広め、人間的に成長を遂げて、自分の価値を高めていくことが重要になってくる。
そういった人生全体の目的や意義から、目の前の目標、つまり野球技術の向上に取り組んでいかなければ、一流の世界まで自分を高めていくことができない。
これまで野球だけをやってきたようなプロ野球の選手たちは、このようなことを考えてこなかった者がとても多い。 |
これはプロ野球の世界の話です。プロの世界ですらこのような考え方が重要であるとしたら、まして高校野球は教育の一環であり、(一生野球をやるわけではないのですから)生徒たちは良い就職先に合格し、社会人となって、社会の荒波に打ち勝って社会に貢献する、充実した人生を送るための土台作りが大切なことはいうまでもありません。
柏原監督は、野球を通して人間教育を行っています。高校野球も勝負の世界であることは間違いはありません。そして、勝利を目指してチームつくりが行われ、選手も練習に取り組んでいます。しかし、高校野球はプロ野球ではなく教育の一環であるという見地からすれば、勝利を絶対的に優先し、そのために選手の人間性や個性を犠牲にしてしまうことはその本質から外れたものになります。選手の成長(人間的にも技術的にも)を育んで行くことも大切であろうと思います。
近年公式戦での成績がふるわないということに関しては、初戦から強豪チームにあたるというケースが多くなっていることがあるかと思います。
ここで2試合を例にお話させていただきます。
2007年7月26日、ベスト8を賭けた高輪戦。
葛飾商 |
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高輪 |
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1× |
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葛商は9回表の攻撃で3番堤君のレフト線の2塁打.一死後、5番沼田君のあわや逆転2ランホームランかと思わせるレフトフェンス直撃の3塁打で同点。スクイズでも外野フライでも、あるいは内野ゴロでも勝ち越しの1点はほぼ間違いない状況となりました。ここで1点勝ち越せば9回裏は下位打線。堤投手は完璧に抑えているので4−3で勝利はかたいと思われました。
高輪バッテリーはマウンドで打ち合わせをしました。彼らは中学からのバッテリーだそうです。今投手は「相手はバットが振れているからスクイズはない。絶対に打たせないから」と言い切って力投し二者連続三振でピンチを切り抜けました。ここで勝負が決まった試合でした。
葛商は今投手の読みどおり強攻策でチャンスを潰しベスト8を逃したのです。この采配に異論もあるかもしれませんが、「代打のA君は打撃が良い選手だから将来性を考えたら小細工は彼のためにはならない。あの経験から成長しいい選手に育っています。新チームで活躍しますよ」と後日、監督と会ったときの言葉でした。
確かに、高輪戦に勝っても葛商に優勝して甲子園にいける力はありません。都立高校でベスト16は立派な成績だといえます。東東京予選で優勝しなければベスト8もベスト16も同じです。それならば彼の将来性を考えて、長所を生かす方向で小細工せずに選手の力に任せたという采配だったと私は思いました。
昨年は葛商は一回戦から強豪チームに当たってしまったというクジ運によって初戦敗退でした。しかし試合内容は、結果はコールド負けでしたが、7回表で1点加点し2−3とし、葛商は試合の流れを掴みました。7回裏を無失点に抑えれば葛商に勝利の女神が微笑む可能性が高くなった一瞬でした。7回裏の攻撃前に日大桜ヶ丘はベンチ前でサークルを組み監督から激が飛ばされたことでもそれは明らかです。ここまでの試合経過は日大桜ヶ丘は3点は奪ったものの坂田投手ー伊藤捕手に完璧に抑えられていました。逆に2点に抑えているものの葛飾商業の拙攻に助けられた面が多く、葛商が若干押しぎみの内容でした。
日大桜ヶ丘がピンチを迎える度に、応援席が声もなく、微動だにせず祈るように必死の視線がグランドに注がれるシーンが何度かありました。
のちに選手の声を知ったのですが、7回の攻撃を終えた時点で、この試合で初めて、葛商の選手は「勝てるかもしれない」と思ったそうです。それまでは無心で戦っていたものが、勝利を意識したとたん、日大桜ヶ丘の力に押しつぶされるように失点し敗れました。
(7回表まで)
葛飾商 |
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日大桜ケ丘 |
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なお付け加えれば、2005年もベスト8をかけた芝浦工大戦も9回表まで4−3とリードし、シード校を追い詰めるという戦いをしています。
柏原監督は、葛商の選手は素直でよい子が多い反面精神力が弱いといいます。上記の2試合もその弱点から勝てたかもしれない試合を落とした例です。しかし見方を変えれば、いずれも相手は私立高校で葛商よりは実力が上のチームです。その相手を脅かし、あと一押しまで追い込んだ場面もあったのですから評価すべき点は正しく評価すべきです。
そして、弱点をいかに克服すべきか、監督の指導のもと、選手の一人ひとりが課題をもって取り組む努力が必要です。それには個々人の自覚が大切で、個々人が課題と目標をしっかりともって練習に取り組むことが重要だと私は思います。
また、監督の指導と日頃の練習の成果を信じて、相手チームの名に臆することなく、自分自身に自信をもって挑むことです。それが後一歩の壁を打ち破り、私立高校に負けないチームとなる道だと私は思います。
野村元監督は言っています。「野球は強いチームが必ず勝てるというわけではない」。弱小チームでも強いチームを倒せるのだと言っています。
ところで柏原監督の人間教育の成果という面では、日大桜丘戦後に、応援の方々に対する3年生部員の挨拶にその一端が表われていて、私と同行された方が「高校生の挨拶ではない」と驚かれておられました。、
3、練習が厳しくて野球部をやめる子がいる。
都立高校は少子化による生徒の減少から統廃合の荒波にさらされています。都立高校は生き残りをかけて懸命の努力を続けています。各学校とも、学校をアピールする手段としてメディアが大きく取り上げる野球部に力を入れています。都荒川商業との練習試合をHPに載せていますが、私の第一印象は「これが都立高校の練習試合か」というものでした。
都荒川商業の監督は、試合中、選手個々のプレーについて大声で「叱りつけている」という厳しさです。練習試合とはいえ、実は、統廃合の第二段が始まれば、葛飾商業と荒川商業は、生き残りの戦いが始まります。単に野球の試合に勝った負けたではなく、どこの都立高校も生き残りを賭けて懸命な努力を続けていて、野球部もその一端を担っています。
私は、葛商野球部の練習が、他の都立高校と比べて特別厳しいのかどうか知る立場にありませんが、練習試合で対戦相手の様子を見ていると、とても厳しいものがあって、驚かされます。葛商野球部だけが特別厳しい練習をしているわけではないと思います。
↓ ↓ ↓ ↓ ↓
・荒川商業との練習試合
さて、葛商が「商業高校」として生き残りを賭けているのは、なにも野球部だけではありません。他のクラブ活動の活躍や高い就職率、検定の合格率、そして社会に巣立って恥じない人材教育=生活指導・・などに力をいれ、社会における葛商の評価を高める施策が続けられています。この8年間を振り返っても高橋久子校長、山崎和夫校長、山下敬緯子校長、小山公史校長の下、厳しい時代にあって、どんな時代にも耐えられる生徒を育てる教育に向かって学校改革が推進されてきました。
その中で特筆されるのは山下校長の決断によって柏原氏を野球部監督の迎えたという英断です。外部から流れ込んだ新しい風が葛商改革の追い風となりました。葛商が今日あるは柏原監督の力も大いに貢献していると私は思います。また、野球部に携わった先生は、貴重な経験と勉強ができるチャンスを得て、これからの教員生活に大きな財産を得られたと思います。おそらく柏原監督と過ごした日々は一生の財産になっていると思います。それは野球部の生徒にもいえると思いますし、葛商生全体にもいえることだと私は思います。
学校改革の成果として、厳しい社会情勢の中で、昨年の46期生が全員進路を決めたという実績です。これは特筆すべきことでしょう。また、運動部の生徒の就職内定は早かったといいます。それは理由のあることで、強い精神力、協調性(チームワーク)、礼儀、感謝といった資質を鍛えられ、育てられた結果でありましょう。
最後に以下の事項を御報告してまとめとしたいと思います。
1)山下校長から小山校長に代わるとき、同窓会は野球部父母会から依頼を受けました。
もし、新校長が柏原監督を辞めさせるようであれば父母会は留任運動を起こしますので、そのときは同窓会も支援してください、という依頼でした。
2)やめる者はやめる。残るものは残る。・・たまたまこの原稿を書いていたときに放送されていたTV番組「味いちもんめ」でのセリフです。野球部の練習が厳しいからといって逃げてしまったら、これから先の人生、困難にぶつかる度に逃げることになりはしないでしょうか。厳しい練習を乗り越えることによって、社会の困難を乗り切って生きていく人間力が身についていくのだと思います。
3)2007年7月26日、ベスト8を賭けた高輪戦後、学校に送られてきたFAXをご紹介いたします。
葛商野球部のみなさん〜
“感動をありがとう”
みなさんのおかげで
高校野球の素晴らしさを実感しました。
私は今日、初めて高校野球を観戦しました。
すばらしかったです!感動しました。元気をもらいました!!
葛商に知っている人とかいない私ですが2年前から葛商ファンです。2年前野球のユニフォームを着た子に“がんばって!!”と声をかけたら 周囲の子たちも皆、姿勢を正して「ありがとうございます」と大きな声で返してくれたことがきっかけでファンになりました。大きな声が出る部、さわやかな挨拶をする部の、スポーツの成績はきっと良いはずと思い、おととし、去年と、この時期は新聞で葛商が勝っているか、毎朝新聞でみてまいりました。
今朝、葛商がベスト8をかけて試合に臨むことを知り仕事を休暇にして神宮球場へ行きました。本当に観戦して良かった。素晴らしい試合でした。
チーム力や守備やマナー、すべて相手チームに勝(まさ)っていたと思います。7回のタブルプレー、8回の守備はすばらしかったです。9回は得点すると思ったら素晴らしいヒットがでて点が入り、感動と興奮。
みんなの粘りあるプレーは、きっと忘れないと思う。
ピッチャーもよくがんばりましたね?! 腕がスゴク疲れたでしょう?
こんなすばらしい試合をした葛商野球部はこれからもずっと進化しつづけると思います。また、応援にいくことを楽しみに私もがんばります。いつか甲子園で観たい!!
必ず、いつか出場してくださいね!
本当にありがとう。そしてお疲れさまでした。
金町在住の主婦より |
頂いたFAXは野球部はもちろん、葛商の宝物です。
うまく文章がまとめられませんが、私はお子様が葛商野球部に来られることを期待しています!
こちらは「葛友みんなの広場」で回答させたいただいだ文章です。あわせてお読みください。
http://www.katsusyo-dosokai.net/hiroba_res.html