第93回全国高校野球選手権大会(朝日新聞社、日本高野連主催)に福島代表として出場した聖光学院の選手らが帰福した。バスで大阪を14日朝に出発し、約11時間かけて午後7時過ぎに伊達市の学校に到着。待ち受けた約200人に拍手で迎えられた。小沢宏明主将は「応援してくださった方々に感謝の気持ちでいっぱい」とあいさつ。聖光学院の夏がすべて終わった。
震災の年の甲子園。好投手歳内を擁し、優勝候補と言われた聖光学院の夏は注目度抜群。大阪の宿舎入り、抽選会、練習、試合、どこでも報道陣からは震災の影響を問われ、選手たちは真摯(しんし)に対応していた。
福島大会は敵無しだったが、甲子園は苦戦した。初戦の日南学園(宮崎)戦は今夏初めて先制された。だが、2点を追う7回、2四球と連打、犠飛で逆転。9回に追いつかれたが、10回歳内がサヨナラ適時打。勝負強い打撃が光った。
同じ被災県の花巻東(岩手)と古川工(宮城)が初戦敗退。普段と違う雰囲気の中、選手らはいつも以上に試合への集中に労力を使ったように見えた。
しかし、2回戦の金沢(石川)戦で失策に泣いた。6回。記録に残らないものを合わせて四つの守りのミスで逆転された。普段「試合を想定してノックを受けろ」との練習を見てきて信じられなかった。何かがおかしい。これが「魔物の住む甲子園」なのか。
好投手・釜田から8安打した打撃は全国レベルだったし、2試合30奪三振の歳内の地力は抜けていた。それでも、全国制覇は遠かった。緊張感と思いきりのバランスの難しさ。深紅の大優勝旗を手にするために必要なものを学んだ。
斎藤監督は「これもチームの歴史」と話した。福島代表は50敗目(26勝)。聖光学院が初めて明確に頂点を目指した夏は残念な形で幕を閉じた。だが、「福島のために」と被災地を背負って頑張った選手たちの気持ちは、十分に伝わる戦いだった。(福宮智代)
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