約4カ月ぶりの再会に涙し、ともに笑い、声を張り上げた。東日本大震災と原発事故の影響で部員が減った双葉翔陽、富岡、相馬農の3校で編成した「相双連合」。第93回全国高校野球選手権福島大会の1回戦で喜多方と対戦した14日の鶴沼球場は、グラウンドに負けないぐらい、スタンドにも濃密な時間が流れていた。舞台裏も感動的だった「相双連合の夏」を再び――。
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震災直後、東京の高校に転校した中田麻里奈さん(左)と
新潟の高校に転校した石原悠衣さん |
■元マネジャー2人「試合があったから会えた」
双葉翔陽で女子マネジャーだった3人の2年生も4カ月ぶりに再会した。一緒に汗を流した仲間の顔を見つけると、泣きながら抱き合った。
震災直後、新潟の高校に転校した石原悠衣さんは「2人の元気な顔を見て、ホッとした」。転校先の東京から高速バスで駆けつけた中田麻里奈さんは「会えたのは、試合があったから。選手にありがとうって言いたい」。松本杏奈さんは福島県内の高校・大沼で再びマネジャーに。この試合のアナウンスを務めた。
双葉翔陽のユニホームに着替えて声援を送った石原さんと中田さんは、応援席に一礼する選手たちに向かって声を張りあげた。「みんな、かっこよかったよ」
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震災後初めて再会した双葉翔陽の仲良し4人組。
左から加藤義江さん、水谷麻美さん、山之内優未さん、根本礼奈さん |
■双葉翔陽の170人、スタンドで再会
その日、三塁側は大応援団でごった返していた。中心は全校応援をした双葉翔陽。平商と坂下に約70人ずつ、安達東と小野にも分かれた生徒約170人が、震災後初めて一堂に会した。
「お弁当を一緒に食べる仲良し六人組だった」という3年生の山之内優未さんら4人は並んで声援を送った。「2人は転校しちゃった」と話す水谷麻美さんと2人は坂下のサテライト校に通う。涙ながらに抱き合って再会を喜んだ根本礼奈さんと加藤義江さんはそれぞれ平商と小野にいる。
「野球部が週1度集まって頑張っている姿が生徒の励みになっている。いい機会。みんなで応援することにした」と小野寺典子校長(59)。ブラスバンド部員12人もそろって演奏するのは震災後初めてだった。
富岡は光南に通う24人が駆けつけた。同じ光南で学ぶ中村公平(3年)が7回に本塁打を放つと、大騒ぎに。誉田秀隆校長(57)は「バラバラになった相双の子が遠い会津地方にこれだけ集結した。チームをまとめて下さった方々に感謝です。涙が出ちゃいます」。
3校17選手の保護者ら約50人は「心一つに。相双連合」と書かれた横断幕を用意し、そろいのTシャツに身を包んだ。
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喜多方にコールド負けし、試合終了後相手チームの校歌を聞く相双連合の
選手たち。ユニホーム姿左から2人目が遠藤剛司主将、3人目が本塁打を
放った中村公平=鶴沼 |
■東京へ転校した元主将「俺の分戦ってくれた」
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遠藤真弘さん |
この日は、震災前に双葉翔陽の主将だった遠藤真弘さんも応援に駆けつけた。震災後、東京都内へ転校したが、野球部はなく、ソフトボール部に入った。「ニュースで相双連合を見ると、ますますやりたくなって、悔しかった」
遠藤主将と連絡をとり、チームの様子を逐一聞いた。試合前日も会場近くの旅館に泊まったメンバーに「楽しんで」と電話した。
選手と同じ「相双」の帽子をかぶり、試合開始時にはスタンドぎりぎりで声出しをしたチームと一緒に大声を出した。「俺の分まで戦ってくれた気がした」(福宮智代、安藤嘉浩、山口裕起)
2011年7月19日
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